準同型写像の基本性質と例について解説!

こんにちは。今回は前回に続き、群論で非常に重要な準同型写像の基本性質と例について解説していきます!

準同型写像とは、前回説明したように2つの群について演算を保存する写像のことです。今回はこの準同型写像について基本性質と例について解説していきたいと思います!

まずは準同型写像の例から見ていきます!

例1 前回の写像φ:Z/2Z→{1,-1}を定式化しよう。

この写像は[0]→1、[1]→-1と決めることによって、準同型かつ全単射となることがわかります。

注意としてはGには加法、G'には乗法が入っているので、準同型の式は

φ(a+b)=φ(a)φ(b)となっています。

左辺がGでの演算、右辺がG'での演算になります。

証明

まずφが準同型であることを示します。

φ([0]+[0])=φ([0])=1=φ([0])φ([0])

φ([1]+[0])=φ([1])=-1=φ([1])φ([0])=φ([0])φ([1])=φ([0]+[1])

φ([1]+[1])=φ([0])=1=φ([1])φ([1])

が成り立つのでφは準同型写像となっています。

全単射性について

単射性はφの定義からわかります。

φが単射

⇔φ(a)=φ(b)ならばa=b

⇔a≠bならばφ(a)≠φ(b)(対偶を取った)

よってa=[0]、b=[1]を取ってφで写すと、φ([0])=1、φ([1])=-1なので単射となります。

全射性もφの定義から明らかですが、示しておきます。

φが全射

⇔任意のy∈Bに対し、x∈Aが存在して、y=φ(x)と書ける。

φの定義から{1,-1}から任意に元を取ります。すると候補は1か-1しかないことはすぐわかります。

この2つの元に対し

φ([0])=1

φ([1])=-1

となるので任意にb∈G'を取ると、φ([a])=bとなるa∈Gは確かに存在していることがわかります。

以上よりφは準同型かつ全単射となります。よってφは同型写像となります。(後半で説明)

例2 乗法群C^×からR^×への絶対値を取る写像fを

f:z=x+iy↦f(z)=√(x^2+y^2) (x,y∈R)で定義します。

このときfは準同型写像となっています。

証明

複素数の絶対値の性質として、任意にz1,z2∈C^×を取ると|z1・z2|=|z1|・|z2|が成立します。

このことの証明

まず、z1=x1+iy1,z2=x2+iy2とおきます。

z1・z2=(x1+iy1)(x2+iy2)

   =x1x2+ix1y2+ix2y1-y1y2

   =(x1x2-y1y2)+i(x1y2+x2y1)

|z1・z2|=√{(x1x2-y1y2)^2+(x1y2+x2y1)^2}

    =√(x1^2・x2^2-2x1x2・y1y2+y1^2・y2^2+x1^2・y2^2+2x1x2・y1y2+x2^2・y1^2)

    =√(x1^2・x2^2+x1^2・y2^2+x2^2・y1^2+y1^2・y2^2)

|z1|・|z2|=√(x1^2+y1^2)√(x^2^2+y2^2)

     =√{(x1^2+y1^2)(x2^2+y2^2)}

     =√(x1^2・x2^2+x1^2・y2^2+x2^2・y1^2+y1^2・y2^2)

よって、|z1・z2|=|z1|・|z2|が成立します。

よってfが準同型写像ならば次が成立します。

f(ab)=f(a)f(b) (∀a,b∈G)

先ほどの式を見てみましょう。

|z1・z2|=√(x1^2・x2^2+x1^2・y2^2+x2^2・y1^2+y1^2・y2^2)

f(z1・z2)=f(x1x2-y1y2)+i(x1y2+x2y1)

     =√{(x1x2-y1y2)^2+(x1y2+x2y1)^2}

     =√(x1^2・x2^2+x1^2・y2^2+x2^2・y1^2+y1^2・y2^2)

よって、|z1・z2|=f(z1・z2)

また、|z1|・|z2|=√(x1^2・x2^2+x1^2・y2^2+x2^2・y1^2+y1^2・y2^2)

f(z1)f(z2)=√(x1^2+y1^2)√(x^2^2+y2^2)

     =√(x1^2・x2^2+x1^2・y2^2+x2^2・y1^2+y1^2・y2^2)

よって、|z1|・|z2|=f(z1)f(z2)

以上より、f(z1・z2)=f(z1)f(z2)が成立するのでfは準同型写像になります。さて、写像φが同型写像であることの定義をします。

定義3 写像φ : G→G'が同型写像であるとは、φが準同型写像であって、かつ全単射であるときに言います。

例4 実数RからR(>0)への写像f:x↦e^xは準同型写像です。このことを証明しましょう。

ただし0以上の実数全体の集合をR(>0)で表す。実数の集合Rは加法に関して群になります。写した先のR(>0)は乗法に関して群となります。

よって準同型の式は、f(a+b)=f(a)(b)

よってe^(a+b)=e^a・e^bとなりますが、これは指数法則から成立しています。

また、このfは全単射となっています。

全射性について

∀y∈R(>0)を取ります。このときe^x=yを解くとx=log(y)となりますが真数が正なのでxが存在します。よって全射となります。

単射性について

f(x1)=f(x2)⇒x1=x2が成立すればよい。仮定よりe^x1=e^x2となります。

底が同じなので指数を比べてx1=x2が成立します。したがって、fは単射となります。

以上よりfは同型写像となります。

命題5 写像φ : G→G'を準同型写像とし、eをGの単位元、e'をG'の単位元とします。このとき、以下が成立します。

(1)f(e)=e'(単位元は単位元に写る)

(2)∀x∈Gに対して、f(x^-1)=f(x)^(-1)

証明

(1)e・e=eが成立しているのでこの両辺をfで写すと、f(e・e)=f(e)

fは準同型なのでf(e・e)=f(e)f(e)となります。

f(e)f(e)=f(e)

G'は群なので逆元が存在します。よって、f(e)^(-1)を右からかけてf(e)=e'となります。

(2)fが準同型より

f(x)f(x^-1)=f(xx^(-1))=f(e)=e'

よって両辺にf(x)^(-1)をかけて

f(x^-1)=f(x)^(-1)

となります。

命題6 写像φ : G→G'を準同型写像とし、eをGの単位元とします。このとき次が成立します。

(1)Imφ=G'⇔φは全射

(2)Kerφ={e}⇔φは単射

(3)φが全単射のとき、逆写像φ^(-1):G'→Gも準同型

注意:逆写像と似た用語に逆像がありますが、逆写像と逆像は違うモノです!逆写像と逆像の違いについてまとめてみます。

逆写像

定義

写像f:X→Yが全単射であるとき、任意のyに対してf(x)=yとなるようなx∈Xがただ1つ存在します。したがってyに対し、そのようなxを対応させると、写像Y→Xが定義できます。これを逆写像といい、f^(-1)で表します。

逆像

定義

まず写像X→Yを考えます。部分集合A⊂Xに対して

f(A)={f(a)| a∈A}

をfによるAの像といいます。特にf(x)をfの値域といいます。一般にf(X)⊂Yが成り立ちます。

また部分集合B⊂Yに対して

f^(-1)B={x∈X | f(x)∈B}

をfによるBの逆像といいます。つまり逆写像は写像であって、逆像は集合なのです。

写像と集合は全然違うものですよね。逆写像には写像とついているので写像なんだと理解しましょう。

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いかがだったでしょうか?今回は準同型写像の例について解説しました。今回は以上になります。ありがとうございました!

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