群の定義と例について詳しく解説!

こんにちは。

今回は群の定義の話をしたいと思います。群論は数学科以外の化学系や物理系などの専攻でも必要になってくる分野です。群論は代数学の1分野で、群論以外にも環論、体論、ガロア理論、符号理論、暗号理論などがあります。群論、環論、体論の違いは何なの?と思いますよね?それは演算の数です。群においては演算は1つですが、環や体においては2つになります。

環と体の違いについてはここでは扱いませんが、環は加法、減法、乗法が自由にできる世界で、体はいわゆる四則演算(加減乗除)が自由にできる世界のことです。みなさんがよく慣れ親しんでいる有理数や実数の世界、これが体なんですね。これらは有理数体、実数体と呼ばれています。

さてこれから群の定義に入っていくわけですが、群論などのいわゆる抽象代数学は本質的に必要なモノだけを取り出して抽象化するので扱っている集合や演算自体は大したことなくても、考え方が非常に難しいです。

さっき体の演算は2つと言いましたよね?でも体には四則演算と言って4つの演算があります。ではあと2つは必要ないのでしょうか?実は体の世界では演算は本質的に2つしか必要ないのです。これについては後ほど説明できればと思います。

定義に入る前に用語の説明をします。まず整数の集合をZ、有理数の集合をQ、実数の集合をRとします。

では群の定義です。まずその前に二項演算の定義をします。

定義1 二項演算

集合Sに対し、写像f:S×S→Sを次で定義する。

f(a,b)=a・b

このとき写像fをSにおける二項演算といいます。この二項演算を定義すると群とは何かが定義できます。

定義2 群

集合Gが群とは次の1~4を満たすときをいう。

1.(大前提)a・b∈G(演算した結果がGの中に入っている)

2.結合法則

任意にa,b,c∈Gをとると、(a・b)・c=a・(b・c)

が成立する。

3.単位元の存在

あるe∈Gが存在して、任意のa∈Gに対し

a・e=e・a=aが成立する。

このとき、この特別な元eをGの単位元と呼びます。

4.逆元の存在

任意のa∈Gに対し、あるa’∈Gが存在して

a・a’=a・’a=eが成立する。

このときa'をa^(-1)と書きaの逆元という。

以上4つが成り立つとき、集合Gを群と呼びます。

注意

3と4で”任意”と”ある”が逆になっていますが、これが群の定義において重要です。3については単位元という特別な元(通常は数の1)があって、他のどんな元と演算してもその元は変わらないということ。たとえば100に1をかけても100のままだし、10000に1をかけても10000のままである。つまり演算する相手を変えない性質を持っているのが単位元といえる。

4はどんな元に対しても何かGの元があって演算するとちょうど単位元になると言っている。たとえば有理数の世界に演算として乗法(普通の掛け算)を導入すると1に対しては1×1=1で1が逆元、2に対しては2×1/2=1で1/2が逆元になる。つまりこれは逆数を表していることになる。

単位元は相手が何であってもただ1つしか存在しないが逆元は相手の元が何であるかによってころころ変わっていることに注意しよう。

では次から具体的に群の例について考えてみます。群では考える集合もですが、演算を何にするかも同様に重要です。集合と演算によって群になるかどうかが決まります。

例1

Gを整数の集合とする。写像f:G×G→Gをf(a,b)=a+bで定義する。このときGは群である。

証明

1について

a・b=a+bでa,b∈Zなのでa+b∈Zである。

2について

任意のa,b,c∈Zに対し(a+b)+c=a+(b+c)=a+b+cが成立する。

3について

0∈Zがあって、任意のa∈Zに対しa+0=0+a=aが成立する。

4について

任意のa∈Zに対し-a∈Zが存在しa+(-a)=(-a)+a=0が成立する。

以上よりGは群である。

少し説明を加えたいと思います。1と2については普通の数の足し算なので問題ないでしょう。単に整数と整数を足したら整数になるよねとか、足し算についてカッコの位置に関係なく成立するよねなどごく当たり前のことを言っているだけです。

3について

3については単位元を求めるのですが、定義に従うと

a・e=e・a=a、つまりa+e=e+a=aとなり

a+e=aからe=0となります。

4について

4については逆元を求めるので

a・a'=a'・a=e、つまりa+a'=a'+a=0となり

a+a'=0からa'=-aとなります。

ではこれはどうでしょうか?

問題 集合Gを整数の集合として、演算を乗法(普通の掛け算)とする。このときGは群になるか?

答え

ならない

これは群にならないのですが、なぜかわかりますか?それでは少し考えてみましょう。まず1つずつ見ていきましょう。

1について

1については整数と整数をかけても整数なので成立します。

2について

任意のa,b,c∈Zに対し(ab)c=a(bc)=abcが成立します。

3について

a・e=e・a=a、つまりae=aとなり

a(e-1)=0となります。

aはなんでもよいので例えばa=2とすると、e=1となります。

4について

群ではないが答えなので、4が成立しないことになりますがどうなるか考えてみましょう。a・a'=a'・a=e、つまりa・a'=1となりa'=1/aとなる。しかしここで、a∈Zなので1/a∉Zとなる。逆元は当然Gの元なのでZの元でなくてはならないが、Zの元ではないので成立しない。以上よりGは群ではない。

先ほどの問題のGを群にする方法について解説していきます。先ほどは逆元が存在しなかったので群にならなかったですよね。では1/a∈Z、つまり1/aが整数になる条件を考えてみましょう。その整数をnとすると、1/a=nよりan=1。a,n∈Zなのでa=n=1か、a=n=-1の2通りしかないことがわかります。a=1のときは1が逆元で、a=-1のときは-1が逆元となります。

そして単位元は1なのでこれで群となります。つまりG={1,-1}で演算は乗法とするとGは群になるのです!この群を乗法群と呼びます。

最初のほうで四則演算で本質的に必要な演算はたった2つだけと言いましたがそれはなぜか?を説明していきます!

これは体の演算を見るとわかります。体には通常の加法と乗法の2つが導入されていることが多いです。注意点としては群でも環でも体でも演算は普通の加法や乗法とは限らないこと。

つまりa・b=a×b-a+b+1みたいなものでもいいわけです。これが群になるかはまた別の問題ですが。

そして加法の逆元はマイナスの数、乗法の逆元は逆数であることはさきほどやりましたね。四則演算において加法と乗法以外には減法と除法ですが、減法とはマイナスの数を加えること、そして除法とは逆数をかけることに相当します。少し考えればわかりますね。なので減法は加法の逆演算(逆数を足す)、除法は乗法の逆演算(逆数をかける)になっているので、加法と乗法さえあれば四則演算はできるということになります。

いかがだったでしょうか?今回は抽象代数学の入門でもある群の定義と例について解説しました。少しは群というものの概念について理解できましたでしょうか?

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今回は以上になります!ありがとうございました!

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