部分群の定義と例について解説!

さて、今回は前回の続きということで部分群の定義と例について紹介します!

まず部分群とは何かについて解説していきます!

定義1 部分群

HをGの部分集合とする。以下の1、2が成立するときにHをGの部分群という。

1 a,b∈H ⇒ a・b∈H

2 a∈H ∈ a^(-1)∈H

部分”群”というからには部分群は群の一種であるが、このことはそれほど自明ではないことに注意しましょう。

問題 HをGの部分群としたときにHもまた群であることを示せ。

証明

まず証明において重要なのは仮定(前提条件)が何で示すべき結論が何かということを把握することから始まる。

前提条件としては

1 a,b∈H ⇒ a・b∈H

2 a∈H ∈ a^(-1)∈H

示すべきこと

1.(大前提)a・b∈H(演算した結果がGの中に入っている)

2.結合法則

任意にa,b,c∈Hをとると、(a・b)・c=a・(b・c)

が成立します。

3.単位元の存在

あるe∈Hが存在して、任意のa∈Hに対し

a・e=e・a=aが成立する。

このとき、この特別な元eをHの単位元と呼ぶ。

4.逆元の存在

任意のa∈Hに対し、あるa’∈Hが存在して

a・a’=a・’a=eが成立する。

このときa'をa^(-1)と書きaの逆元という。

1については前提の1そのままなので成立する。

2について

今、Gは群なので演算a・b∈Gが成立する。

そしてa・b∈HなのでHでも同じ演算を使っていることがわかる。

Gでの演算に対し結合法則が成立しているので同じ演算を使っているHでも結合法則が成立する。

3について

前提条件1においてb=a^(-1)とおくと(前提条件2よりHにおいて逆元は存在する)

a・a^(-1)=e∈H

よってe=a・a^(-1)=a^(-1)・a∈Hとなり

eはHでも単位元となる。

4について

前提条件2よりa^(-1)∈Hとなるので逆元も存在する。

以上より、HはGの部分群となります。

次に部分群の例について解説していきます。

特に大学以降の数学においては、例が挙げられるかが重要になってくる。例えば今の例だと部分群の例が挙げられないと部分群については何もわかっていないのと同じことであるからだ。だいたいどの分野もそうだが、特に抽象代数学においては豊富な例に触れて自分でも例について2,3挙げられるようにしましょう。

そして逆に成立しない例、この例でいくと部分群でない例も重要である。成立する例だけでなく、成立しない例も挙げられることによって概念への理解が深まっていく。

では早速部分群の例について見てみましょう!

例1 G=Z(整数の集合とする)とし、演算を加法とする。このときGの部分集合である偶数の集合HはGの部分群

である。

証明

示すべきこと

1 a,b∈H ⇒ a・b∈H

2 a∈H ∈ a^(-1)∈H

1について

任意にa,b∈Hを取る。a,bは偶数なのでa=2k,b=2l(k,l∈Z)と表せる。

このときa+b=2k+2l=2(k+l)∈H

よって1が成り立つ。

2について

逆元を考えるのですが、その前にHの単位元を求める。

単位元の存在

あるe∈Hが存在して、任意のa∈Hに対し

a・e=e・a=aが成立します。

このとき、この特別な元eをHの単位元と呼ぶ。

加法なのでa+e=e+a=aとなり単位元は0となる。

よって

逆元の存在については任意のa∈Hに対し、あるa’∈Hが存在して

a・a’=a・’a=eが成立する。

このときa'をa^(-1)と書き、Hにおけるaの逆元という。

いまa=2kとおくと2k+a'=0より、a'=-2k∈H.

よって逆元は-2k(k∈Z)となる。

したがって2も成り立つことがわかる。以上よりHはGの部分群となる。

同様にすると3Z、4Z・・・などもGの部分群になるので一般に自然数nの倍数の集合をnZとおくと、nZはZの部分群となる。

例2

G=Q-{0}とする(有理数の集合Qから0を除いたもの)。演算を乗法とする。

このとき、Gの部分集合H={1,-1}はGの部分群となる。

証明

示すべきこと

1 a,b∈H ⇒ a・b∈H

2 a∈H ∈ a^(-1)∈H

1について

1・1=1∈H、(-1)・1=1・(-1)=-1∈H、(-1)・(-1)=1∈H

よって1が成立する。

2について

Hの元は1か-1であるからそれぞれについて逆元を求める。

まず演算は乗法だから、単位元は1であることがわかる。そして先ほどの計算から1の逆元は1、-1の逆元は-1となっていることがわかる。つまり自分自身が逆元となっている場合である。

注意 例2のGにおいて0を除く理由は、0を入れてしまうと演算が乗法なので0の逆元が存在しなくなるのでそもそもGが群にならなくなるため。

部分群にならない例

G=Zとして演算を加法とする。そして、Hを奇数全体の集合とする。このときHは部分群とはならない。このことを示せ。

a,bを奇数とする。奇数なのでa=2k+1,b=2l+1とおける。このときa+b=2(k+l)+2=2(K+l+1)となり奇数にならない。って部分群にはならないことがわかる。

注意 上の例では単位元もないし、したがって逆元もない。

いかがだったでしょうか?部分群とその例、そして部分群にならないときはその理由まで理解できましたでしょうか?新しい概念が出てきたときは常にそうなる例とならない例について自分で考え、概念の理解に努めましょう。これをやっているかどうかで今後の数学への理解度が全く異なります。偉そうに言ってますが、実際私は全然やっていませんでした・・・。

だからこそ例を考えて理解することが重要だとこの記事で言っておきます!これをやってないと3年生以降のゼミで具体例は?と聞かれて答えられずボコボコに(心理的に)されますよ。優しい先生だと、しょうがないなあこれはこうで~のように説明してくれますが、厳しい先生に当たったら、わからないってことは勉強してないんでしょ?質問にも来なかったでしょ?と叱責され(質問に行っても理解していなければ同じこと)地獄を見ます。

なお、授業のときの性格とゼミで性格が真逆になって授業では優しかったのにゼミでは鬼のように厳しいとか普通にありますので要注意。

大学数学の授業や数学書の内容が理解できない。そういった学生さんや社会人のために数学教室を運営しているのでぜひご検討ください。

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今回は以上になります。ありがとうございました!

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