準同型写像の定義について解説します!
こんにちは。
今回は群論で非常に重要な準同型写像について解説していきます!準同型写像とは、2つの群について演算を保存する写像と言われることが多いです。初めて聞く人は演算を保存?何だそれと思われるかもしれませんね。今回はそこから解説していきます!
例としてこんなものを考える。
集合"Z/2Z"に演算+を導入し、もう一つの集合{1,-1}に演算×を導入します。ここで演算+は普通の数の加法、演算×は普通の数の乗法とします。この元たちに対し演算をするとどうなるか考える。
その前に見慣れない新しい概念が出ているのでそちらの説明をしていきます。集合Z/2Zとは何か?これは剰余環と呼ばれる。
剰余環はいわゆる集合の集合(要素として集合を集めたもの)なので難しい概念です。では早速剰余環について解説していきます!
環とは群とは違い、加法と乗法の入った集合だと思ってもらえればいいです。剰余環を定義するのにまず剰余類という概念を導入する必要があるので初めに剰余類の定義をする。
定義(剰余類)
a,m∈Zに対し、x≡a (mod m)を満たすx∈Z全体の集合をa+mZで表し、法mに関する(aの属する)剰余類という。
注意 0+mZはmZのことである。mが特定されている場合はa‾と略して書くことがあります。つまりa‾=a+mZのことである。
例
剰余類の定義でa=0、m=2とすると2Zであるが、これは定義からx≡0(mod 2)となるがmodの定義からこれはx=2k(k∈Z)と表せる。これは偶数全体の集合です。次にa=1、m=2とすれば2Z+1であるが、これは同じようにすると奇数全体の集合であることがわかる。
次に剰余類に関する命題を紹介する。
命題
a,b,cおよびmを整数とする。このとき次が成り立つ。
(1)a+mZ=b+mZ、あるいは(a+mZ)∩(b+mZ)=∅のどちらかが成立する。
(2)b,c∈a+mZならばb≡c(mod m)
(3)次の4つは互いに同値。
a≡b(mod m)、a∈b+mZ、b∈a+mZ、a+mZ=b+mZ
証明(一部)
(2)bとcはmで割ってa余る数なのでそれぞれb=a+mk,c=a+mk'(k,k'∈Z)と表せる。このときb-c=(a+mk)-(a+mk')=(k-k')m。これはb≡c (mod m)を示している。
(3)modの定義からa-b=mk、よってa=b+mk(k∈Z)。これはa∈b+mZを示している。
a∈b+mZよりa=b+mk、b=a-mkとなる。いま、m∈Zなので-m=m'とおくとb=a+m'kとなり、これはb∈a+mZを示している。合同式においては余りが等しい数を同じとみなして計算する。そのため≡ではなく=を使うことがよくあるが、意味としては数としての=ではなく合同式としての=なので注意すること。
次に剰余環について定義する。
定義(剰余環)
m∈Zに対し、法mに関するすべての剰余類を元とする集合を、法mに関する剰余環といい、Z/mZで表す。
Z/mZ={a+mZ | a∈Z}
さて、すべての整数はmを法として0~m-1のどれかと合同で(ある整数をmで割った余りは0からm-1のどれかになる)またこれらは互いに合同ではないから
Z=0‾∪1‾∪2‾∪・・・∪(m-1)‾
a‾∩b‾=∅ (0≦a<b<m)
したがって重複はないので剰余類は全部でm個あることがわかり、
Z/mZ={0‾、1‾、2‾、・・・、(m-1)‾}です。
最初にも述べたが、もちろんZは集合であり、Z/mZは集合の集合であることに注意すること。
剰余類の和と積について
合同式に関して次が成立する。
a_1≡a_2、b_1≡b_2 (mod m)⇒ a_1+b_1≡a_2+b_2、 a_1×b_1=a_2×b_2 (mod m)
これは2つの剰余類からそれぞれの元を選ぶとき、それらの和や積の属する剰余類が選んだ元によらないことを示している。そこで、剰余環の剰余類における和と積を以下のように定義する。
定義(剰余類の演算)
a+mZ、b+mZ∈Z/mZに対しそれらの和と積を
(a+mZ)+(b+mZ)=(a+b)+mZ
(a+mZ)(b+mZ)=(ab)+mZ
で定義します。
この定義をa‾=a+mZを使って、a‾+b‾=(a+b)‾
a‾b‾=(ab)‾
と書くこともできる。
たとえばZ/5Zの世界で考えてみると
2‾+2‾=4‾、2‾3‾=6‾=1‾である。
Z/5Zでは5‾までしかないので、6‾以降が出てきたら5で割った余りを求めてそれに‾を付ける
さて、では最初に戻る。例として加法群(Z/2Z,+)と乗法群({1,-1},×)を考えるとこれらは次のような演算規則を持つことがわかる。
ただし、Z/2Zの元を[0]、[1]と表す。
[0]+[0]=[0]、[0]+[1]=[1]、[1]+[0]=[1]、[1]+[1]=[0]Z/2Zの単位元は[0]、{1,-1}の単位元は1なのでこれらに対応をつけ、残りの[1]と-1についても対応を付ける。
すると以下のようになる。
1×1=1、1×(-1)=(-1)、(-1)×1=-1、(-1)×(-1)=1
ただし、対応は上と下でそれぞれ対応する。たとえば、[0]+[1]=[1]は1×(-1)=(-1)と対応している。
そして演算+を下では×と読み替えると上の演算が下の演算となっていることもわかります。このときZ/2Zと{1,-1}は見かけは全く違いますが群としては同じ構造を持っていると考える。
今回はこのような群の間の関係を考えてみましょう。そこで準同型という概念を導入する。
定義(準同型)
G、G'を群とする。写像φ:G→G'が
任意のa、b∈Gに対し、φ(a・b)=φ(a)φ(b)
が成立しているとき、φを準同型といいます。この準同型のことを演算を保存する写像と言ったりする。
さらに準同型φ:G→G'に対し
Kerφ={g∈G | φ(g)=e'}(ただし、e'はG'の単位元)
Imφ={g'∈G | あるg∈Gに対し、φ(g)=g'}
このとき、Kerφをφの核、Imφをφの像という。ここでKerφはGの部分群であって、ImφはG'の部分群であることに注意すること。つまり、定義からkerφはφで写して単位元になるGの元を集めたものなのでGの部分集合、Imφはφで写した先の元を集めてくるので、G'の部分集合になっている。
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いかがだったでしょうか?今回は準同型写像の定義について解説しました。今回は以上になります!ありがとうございました!